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海外駐在妻物語 41

この前、つけっぱなしになっていたTVの深夜番組で
梅沢富○夫さんが、カレーのスパイスについて
熱弁を奮っていたのをみて
トロント時代の面白話を1つ思い出しました。



スパイス狂想曲 1

それは、突然、私たちの臭覚に攻撃してきた。

帰宅した私は、エレベーターに乗っていた。
私の他に2人、洋の東西と問わず、
エレベータの中ですることといえば1つしかない。
3人でボーっと階数を示すライトを眺めながら
小さな箱の中で時間を共有していた。

ポーンというチャイムとともに
7階でドアが開いた。
その瞬間に、私たち3人は同時に
ングッ!!と息を飲んだ。

【Oh~my God!!!!!】

なに!この臭いは!?
ちょっと!あなた!早く、降りなさいよ!
早くドアをしめさせてよ!!!!!

オーマイガー!のあと、全員が鼻をふさぎ
沈黙がこう語っていた。

私は、投げ出されるように7階で下された。
背後で【閉める】のボタンが連打された。
私は、息を止めたまま、あわてて鍵を開けた。

・・・またや、、、、このニオイ・・・
先週もしてたよなぁー・・・

******

私が、初めてのカナダで暮らしていたアパートには
各国からの移民が暮らしていた。
同じフロアーにも、日本人の私以外に
インド人・パキスタン人・ロシア人・中国人・アルゼンチン人・・・
さながら、オリンピックの選手村のような感じだった。

そして、カナダのアパート・マンションは
日本のように玄関が屋外に面していない。
ホテルのように、大きな建物の中に
向い合わせに部屋がある。

だから、エレベーターを降りると
その密閉された廊下が、いろいろな料理の香りで
満たされていることがよくある。
我が家が晩御飯に魚なんかを焼こうもんなら、
次の日の朝も肩身が狭くなるほど、サバが残り香を放っていた。

ああ、これはニンニクを炒めているなーとか、
カレーやな、とか・・・
空腹を抱えて帰ってくると、廊下で胃袋を刺激され、
ヨダレを垂らしながら、玄関ドアをあける。

・・・で、このニオイ。。。
このニオイも、料理のものだと思う。
なんと、説明すればいいのだろう。
とにかく、嗅いだことのないニオイなのだ。

だけど、不思議と生命に危険を感じるニオイではない。
毒ガスのようなものではないと思う。
毒ガスも嗅いだ事がないから、何とも言えないけど・・・
先週も嗅いでいるのに、今2回目を嗅げているということが
毒ガスではない・・・という証拠だろう。

ドリアンを初めてこの廊下で嗅いだときも
びっくりした。
誰かが、糞を撒き散らしたとしか思えなかった。

廊下だけじゃなく、町の中でもいろいろな新しいニオイを
体験していた。
スカンクのニオイも、マリファナのニオイも
カナダで初めて嗅いだニオイだ。

だが、今廊下に充満しているニオイは、
そういう類のものではなかった。

とにかく、表現のしようが、ない。
しいて例えるなら、すりガラスを爪でひっかいたときの
神経に触る不快な音・・・あんなニオイだった。
そのニオイは、そんな風に私の臭覚だけでなく
脳みそを直に攻撃してきた。

******

その時、ドアがノックされた。
ドアののぞき穴から見ると、女性がいらついた顔で立っていた。
この人は・・・ジーンだ。うちの右奥の方に住んでいる・・・
ドアを開けると、ジーンはドアの内側に滑り込んで来て
ドアを閉めた。
そして、すごい勢いでまくしたてた。

「これをどう思う??」
「こ・・れって??」
「このニオイよ!!」
「クサイですよね・・・先週もしてたし・・・」
「くさいっ??それだけ?私なんて、このニオイから逃げるために
ベランダから飛び降りたくなるわよっっ」
「わ・・・わかります。頭が痛くなりますよね・・・
どの部屋からしてるんだろ?」
「わたしの隣よ、あのインド人よっっ」

隣から、このニオイにに直撃されたら
ベランダから飛び降りたくなるだろうな・・・と思った。

「カスピにも、臭いわよね?」
「??」
「あなたにとっても、これは臭いニオイよね?」

彼女は、確認したかったのだ。
このニオイを不快に思うのは、自分だけでないことを。
他の人にとっても、他の人種にとっても
不快であることを確かめたかったのだ。

ポーンと我が家の斜め前のエレベーターのドアがあいた。
降りてきた黒人のにいちゃんも、顔をゆがめて
「これはいったい何のニオイだ??」と聞いた。

ジーンは彼にも私に聞いたのと同じ質問をした。
あなたにとっても、これは不快なニオイか?と。

彼女は、ちょっと落ち着いた表情で
これで不快なのは私だけじゃないとわかった、
管理事務所に掛け合ってくる、と
部屋に戻って行った。
文句を言いたかったけど、このニオイを不快に感じるのは
自分だけなのではないか・・・ジーンはそう考えて
前回は我慢していたのだろう。
これで、ウラは取れた。
ジーン、頑張って!!と、にいちゃんと2人
帰っていく彼女の背中を、鼻を押さえながら見送った。

******

次の日の午後だった。
またまた、ジーンが我が家の部屋をノックした。
ドアを開けると、その場にいたのは、ジーンだけじゃなく
管理事務所の人も一緒だった。

彼女はあれからすぐに管理事務所に電話した。
悪臭がするのでなんとかしてほしいと。
管理事務所が、すぐに当のインド人に連絡すると
彼女は恐縮して、それはインドから届いた
スパイスのニオイだろうと釈明した。
これからは使わないようにする・・・でも、ちょっと問題がある・・・
届いたスパイスは10種類ほどあり
それを混ぜて使っている、
どれのニオイなのか、自分ではわからない・・・というのだ。

そりゃそうだろう、、、ただ、クサイ!といわれても
それが味噌のニオイなのか、納豆なのか、
私たち自身では判断できない。
それは料理に入れて、食べるほど
その人にとっては親しみあるニオイなのだから・・・

だから、自分の部屋に来て、【これがそうだ!】と
示してほしいと言ったらしい。
それは、金輪際使わないから・・・と

ジーンが言うには、今から彼女の部屋に行って
問題のスパイスを嗅いで見つける、
だから、あなたも一緒に来いということだった。

半ば強引に部屋から引きずり出され
問題の部屋を訪ねた。

インド人の彼女は、ひたすら恐縮していた。
そんなに、みんなに迷惑をかけているとは思わなかった。
どのスパイスがダメなのか、見つけてください。

インドから送られてきたのは、今回10種類。
そして、昨日の料理に使ったのは
そのうちの6種類。
今までは何もなかったのだから、問題のニオイを発するスパイスは
この6種類の中にあると思われる。。。
順番に嗅いでください、と彼女は
1つずつボトルのキャップを開けていった。
1つめは大丈夫だった。
2つめは、私はむしろ好きな香りだった。食欲が刺激される。
3つめも、ちょっとクセのあるニオイだが
これではないなーと思った。
ジーンも私の方を見て、肩をすぼめた。

4つめの蓋が開けられた瞬間
私たち3人は口々に「うわっ!」と叫んだ。

これだ!これに間違いない。
だれも、鼻を近づけて嗅ぐことなく

【ソレだっっっ!!】と指さした。

初嗅ぎした事務所の男性は
オーマイガーオーマイガー!!と目を白黒させた。

すぐに蓋をしめて、インドの彼女は
わかりました、これだったのね。と納得した。
何とかの実をすりおろしたもので、
自分の育った地区独特のスパイスだと説明した。

残り2つはろくに嗅がなかった。
もう、あのニオイのあとだったので、
どんなニオイがしてたか、わからなかった。

******

それ以後、廊下に殺人兵器並の異臭が
満たされることはなくなった。
黒板をひっかくようなニオイに脳髄をやられることもなく
平穏な日々をすごしていた。

あの日、キッチンから不可解な音を聞くまでは・・・・・




その2につづく。



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Author:カスピちゃん
弓と布と毛糸と
絵の具と戯れ
メロンパンとたこ焼きを
こよなく愛する
大阪のおかん。

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