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海外駐在妻物語 38



駐在妻の品格?

エドモントンには、日系人の方はたくさんいらっしゃったが
日本人駐在員という種族は、ほとんど住んでいなかった。
当時、家族づれの駐在員は、なんと我が家だけ。
トロントには、日本人駐在員社会が確固たる序列を持って
出来上がっていたのとは、大違いである。
エドモントンでは私たち以外に2人、単身赴任のおっちゃんがいただけだ。

カナダに日本企業の仕事でやってきて、その後自分で仕事を見つけて
そのまま移住した・・・という方はたくさんおられた。
エドモントンには珍しい【駐在員】という若者夫婦を
暖かく日系人社会に迎えて、みなさん優しく接してくれた。

*****

我が家のすぐそばに、大きなお屋敷があった。
実際には、どれほどの大きさなのかは、定かではない。
道路に面した大きな門から、私道が森のような庭園に伸び、
道からはその建物を見ることは出来なかったからだ。

道路に面した門のそばに、1軒の家があり、
その家に日本人家族が住んでいて、
ご近所ということもあり、お付き合いが始まった。
門のそば、といっても、
この家自体、とても大きなおうちだ。

ここのご主人は、その奥の大きなお屋敷の
【執事】として、働いておられた。
物語などの登場人物としては知っている【執事】というお仕事、
決して、仕事上の秘書なのではなく、
この屋敷の中の家事をまかなうらしい。
話を聞いてもちんぷんかんぷんだったのだが、
お手伝いさんや庭師が何人もいるし、パーティーの取り仕切りから
別荘の管理、家族のスケジュール調整など
その仕事は、想像以上に複雑で多岐にわたっているようだった。

私がお知り合いになったのは、【執事】をなさっている方の奥様だ。
彼女もお屋敷の【執事】の仕事を手伝っている。
彼女は私が洋裁が少し出来る・・・という知って、
小遣い稼ぎに縫い物をひとつ手伝ってくれないか、と
頼んできた。

お屋敷のお嬢様は、ほんとにペチャパイなので
カラダに合う水着がない。
愛用の唯一の水着が、古くなったので作ってやってくれないか、
という依頼だった。
水着なんて作ったことがないので、ためらったが
今ある水着を型に、同じデザインでいい、
ビキニの、カンタンなやつだから・・・というので
引き受けることにした。

見本として、手元に届けられた水着をみて
ぶったまげた。
それは、ほんとにボロッボロだったから。
色は、元は何色なんだろう??というくらい
落ちてしまっているし、
肩ヒモなどは、磨耗して擦り切れている・・・
あんな、大きなお屋敷に住んでいるのに
もっと早く買い換えろよ~・・・

【すごいボロですね~】と素直な感想を述べた私への
Mrs.執事の返答を聞いて、もっとぶったまげた。

【プライベートの島のビーチで着るから
気にしてないのよね】


!!!!
【本人は、まだ着る・・・と言ってるから
型を取ったら、返してくれる?】ときた。

ほんとうのお金持ちというのは、住む世界がやっぱり違う。

*****

水着は4セット新作し、深窓のお嬢様にも無事気に入られた。
その後も、カーテンの繕い物をしてくれと頼まれて
執事家に現物を見に伺ったが、
中世のお城にあるような、別珍布の重厚なもので
触るとボロボロと崩れてくるほどの年代物で
私の手には負えないとお断りした。
本当に、中世のものだったかも・・・と思う。

執事家にはお邪魔するが、
一度もお屋敷を拝見することはなかった。
その私に、チャンスがめぐってきた。

今度、お屋敷でパーティがある、というのである。
お客様は50人、全員着席で、料理をサーブする・・・
ところが、そのメイドさんの数が足りないから
手伝ってくれない?と頼まれた。

50人のディナーパーティ?個人の家で??
しかも、ちゃんとテーブルといすに座っているぅ??

50人のパ-ティといえば、私の結婚式と同じじゃないか・・・
俄然、興味がそそられた私は、
2つ返事でOKした。
当日は、クロっぽいワンピースに白のエプロンをしてきてくれ、
とのことだった。

夫は、そのパーティの日に2週間ぶりに出張から帰ってくる。
家にいないのはまずいかな~と思ったのだけど、
お屋敷を見たいという好奇心に軍配が上がった。

*****

別の、日本人の友人Hさんのおうちでお茶をしていたとき、
私は、ここ最近のMrs.執事のお手伝いの話をした。
今度、パーティのメイドをしに行くんだよ~という
私の話を聞き、彼女は頭のてっぺんから
火炎を噴出し、まさしく烈火のごとく、怒り出した。

曰く、
【アナタは、立派なお仕事をしている

ご主人とともに、カナダに赴任してきた

奥様じゃないか!

なぜそんな、召使いのような仕事をするのだ!】


水着なんて、肌に直接触れるようなものを
押し付けられて縫ってんじゃない!
パーティの皿出しメイドなんて、もってのほか!
そんな仕事は、あなたがすべきもんじゃない!!
Mrs.執事は、なにを考えているんだ!
メイドの手伝いなんて、留学で来てる学生で充分だ、
駐在員の奥さんに、なんて仕事を押し付けるんだ!
安い賃金で、こき使われてるんじゃないわよ!!

彼女は、そのままの勢いで受話器を握り
Mrs.執事に電話をかけて、
【カスピちゃんに今後2度とそんなこと
頼まないでちょうだい!!】と
怒鳴った。

Hさんは、
仕事に尊卑をつけるつもりはない。
だけど、夫がちゃんと仕事を持っていて、
私は食うに困るような生活をしているわけじゃないだろう。
Mrs.執事は、安く丁寧に仕事がはかどればいいと
思っているだけだ。
向こうは私のことを友達だと思っているわけじゃない。
だから、気を使う必要はない・・・と
私にコンコンと説教をした。

プライドを持ちなさいと。

Mrs.執事にはその後、私のほうからTELで
お詫びを、変わらずお友達でいてくださいね、と話したが
彼女との付き合いは、これを機会にぷっつりと切れた。
Hさんのおかげで、【テイのいい、安賃金労働者】として
働かずに済んだのだが、
やっぱりどこかで【お屋敷見たかった・・・】と残念だった私・・・

私の品格が問われた出来事だった。






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プロフィール

カスピちゃん

Author:カスピちゃん
弓と布と毛糸と
絵の具と戯れ
メロンパンとたこ焼きを
こよなく愛する
大阪のおかん。

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