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海外駐在妻物語 36

下書きを3月初めにしたまま、2ヶ月もの間
また、このカテゴリーを放ったらかしにしてしまいました
暑いGWでしたが、エドモントンでは
雪が降ることも珍しくありませんでした。
思い出話で、涼しさを味わってください。



極寒の地 その2 

~死ぬかと思った~


エドモントンはとても寒いところだったが、
不思議とその寒さを苦痛だったと記憶していない。
ひとつには、湿度が異常に低いので
寒いというよりは、痛く感じられたからだろうか・・・
そして、やはり外にはなるだけ出ないようにしていたから。
そして、なにより、家の中はセントラルヒーティングにて
どこでも快適温度が保たれていたからだろう。

それでも、必ず、【薪は用意しておけ】と言われていた。
万が一、ライフラインが止まってしまったら、
家の中で凍死することになる。
薪は地下室に常備していた。
家には、当然暖炉があった。

寒さへの知識さえあれば、極寒地での生活も
どうってことない。
地元の人間なら、そんなバカなことはしない。
【そんなバカなこと】を私は2つ仕出かしてしまった。

******

その日、暗くなってから、地元の高速道路を走っていたときのことである。
エドモントンの街を外周するように、1本の高速道路があり
我が家へは必需品だった。
私が住んでいた地区からどこかに行こうとすると
必ず最低でも1区間は、この高速道路に乗らないと
どこへも行けない。
フツウの幹線道路は、他のどの地区にもつながっていなかったのだ。
そんな場所に住んでいた。

エドモントンは極北の地なので、
夏の日は長く、冬はすぐに暮れる。
冬の朝は9時を過ぎてから太陽が昇り、
夕方の4時には、真っ暗になってしまう。
闇=危険の図式が頭の中にインプットされているので
夜は極力出かけないようにしていたが
その日は、多分カナダ人の友だち・マージーの家で
夕食をご馳走になっての帰りだったのだろう。
どっぷりと暗くなってから、
私はこの【White Mud Highway】を走っていた。

雪が道路に積もると、凍結防止のために
塩をまく。
すると、フツウは溶けるのだが、エドモントンの場合は
溶け切らない。
雪が道路に積もっていくので、塩といっしょに
細かな砂利を混ぜて、道路にまき、
滑り止めにする。
雪の積もった高速道路の上を快調に飛ばしていたのだが
周りのクルマのハネあげる、わずかな水しぶきで
次第にフロントガラスが汚れてきた。
いくら、ワイパーを動かしても
塩まじりのハネはきれいにならない。
だんだん視界が悪くなってきたので
思わず私は、ウインドーウォッシャー液を噴射した・・・・

と、その瞬間、自分のおろかさを悟った!

外は-30℃。噴射されたウォッシャー液は
その瞬時に凍り、霜になってフロンとガラスにへばりついたのだ!!

真っ白!!

寒い冬の朝、路上に停めたクルマのフロントに霜が降りる・・・・
アノ状態を自ら高速道路を運転中に作り出してしまった。

真っ青!!

私はたった一人の車内で、【ひゃぁぁぁぁ・・・・】と細い悲鳴をあげた。
急ブレーキを踏みそうになって、寸でのところで思いとどまった。
アワアワアワと、とりあえず、アクセルから足をはずし、
とにかく、ワイパーを最高速度でふりまわしたけど
なんにも状況はよくならない。

車内の暖房を強にして、フロントガラス側に吹き上げた。
ガラスの下から5cmくらいがすぐに解けて
外が見えた。
私はハンドルをぐっと握って、出来る限りカラダを前にたおし
フロントのその部分から、前方を確認し、
前を走る車のテイルランプだけを頼りについていった。

どれくらい、経っただろう・・・
多分、すぐに元に戻ったと思うのだが、
私には、地獄のフチを覗くには、充分な時間だった。
すっかり視界を取り戻して、辺りを確認すると
ワタシは降りるべき、我が家の最寄出口を
2つ通り越していた・・・・

背中にはぐっしょりと嫌なアセをかいていた。
2度とウォッシャー液は吹くまいと固く心に誓った。

*****

その日も寒かった。
クルマから、降りると息を止めて家に駆け込む。
うっかり深く息を吸うと、気管が凍って
危険だからだ。

外は今日も、-30℃以下
一方、家の中は、23℃くらいの快適温度が保たれている。
ドア1枚で、内と外とでは、50℃以上の気温差があるわけだ。

ドアの表面には鉄板が張ってあった。
そして、50℃の温度差がある・・・・
想像してほしい、ドアの状態を。
ドアの表面は、外側が-30℃と冷やされて縮み
内側は25℃に暖められている。
極端に言うと、ドアは内側に大きく湾曲していることになる。

だから、カギをあけようとしても、なかなかロックが外れない。
ドアが内側にひっぱられているので、
カギのかんぬき(?)がひっかかって
キーが回らない。
ドアノブを左手でつかんで、左足を壁に突っ張って
思いっきりドアを手前に引きながらロックをはずす。
だけど、その日はそれでもキーは回らなかった。
ドアノブを強く引こうとするのだが、手袋がすべって
チカラがうまく入らない。
イライラしたワタシは、暴挙に出た。

手袋をはずして、素手でドアノブをつかんだのだ・・・・

と、その瞬間、ドアノブに手のひらがくっついた!!
昔の、金属の製氷皿に手が引っ付いた体験を持つ人は多いと思う。
全く、あの状態だった。

正確には、手のひら全面が引っ付くことは免れた。
【やばい!!】と思って、寸でのところで手のひら全体で
つかむことはやめたのだが、
薬指と小指の先っぽが、凍りついたドアノブに引っ付いた。

【あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ!!!!!

どうしても取れない!
どうしよどうしよどうしよどうしよっっっっ
ムリヤリひっぱったら、取れるだろう。
取れるけど、皮膚ごと取れるだろう・・・

やばいやばいやばいやばいっっっ
どうしよどうしよどうしよどうしよっっっっ

アタマが真っ白になったとき、
手袋をはずした左手が、真っ白になってきたとき
たまたま隣の奥さんが、出てきた。

半泣きのワタシの顔を見て、
ドアノブに添えられた素手の左手を見て、
彼女はワタシの【Help!!!】という叫び声より先に
すべてを察して、【Oh, my God!!!】
家の中に引っ込んだ。

すぐにお湯の入ったボウルを抱えて戻ってきた彼女は
ワタシの左手めがけて、お湯をかけた。
一瞬、吸い付きが緩み、その瞬間に手が離れた。
目の前で、今かけたお湯がドアの前で凍りついた。
濡れたワタシの左手が、真っ白に凍りついた。

彼女は、すぐに家に入れ!とワタシを自宅に招きいれ
すぐに手を温めてくれた。
すっかり冷え切ったカラダのために
ホットチョコレートを入れてくれた。
そして、彼女はBBQ用のコンロの電熱線のようなものを
持って行って、私の家のドアノブを暖めて
凍りついた氷を溶かしてくれた。

しばらくして、ワタシは無事我が家に帰れた。

すっかり意気消沈した。
これでもカナダ在住歴1年だ。
だけど、ここの寒さは、アタマで解っているだけでは
対処できない・・・

ワタシの左手の指が今もちゃんと揃っていて
そしてちゃんと動いているのは
お隣の奥さんのおかげだ。












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Author:カスピちゃん
弓と布と毛糸と
絵の具と戯れ
メロンパンとたこ焼きを
こよなく愛する
大阪のおかん。

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