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海外駐在妻物語 31

ワタシが英語を学ぶ訳

カナダで初めてのクリスマスを迎えようとしていた。
クリスマスは家族がそろって、料理を食べ、プレゼントを交換し
静かに家で過ごす。日本のお正月のような趣だ。
異国の地で、家族と離れて暮らす私たちには、
クリスマスは意外に寂しい休暇となる。

いろいろあった初めての年が、暮れようとしていた。
その頃には、私の英語もそこそこ上達し、
今では最上級のクラスに参加し、
学校のみんながテキストを買う時、注文をまとめて
出版社に依頼する・・・というような仕事も
授業の一環として、手伝ったりしていた。

この頃の私たちの一番の話題は、
今後の英語学習のことだった。
最上級クラスに所属するクラスメイトたちは、
次はどこで英語を学ぶか・・・ということを考えていた。

仲良しのロザとヨランダは、
もうひとつ上級の学校に行くことを望んでいた。
ロザは、母国ユーゴスラビアでは、企業診断士として活躍していた
キャリアウーマンだったし、ヨランダはアルゼンチンの薬剤師。
彼女たちは、カナダでも自分のキャリアを
仕事につなげるために、より高度な英語を必要としていた。

今、私たちの通っている英語学校は、
【カナダに来た、新移民に最低限の英語を教えるところ】で、
新しくカナダに来た人に、広く門徒を開いていた。
それでも、本来、私のような短期滞在者で、
カナダで働くビザを持たない人間には通う権利はない。
ただ、そこはおおらかなお国柄、【来るもの、拒まず】で
わずかなテキストコピー代だけで、通わせてもらっていた。

しかし、この次の学校に私が入学するのは難しかった。
まず、入学試験を受ける。多分、これは合格するだろう。
そして、【ウェイティングリスト】に名前を載せて
入学の順番が回ってくるのを待つ。
だが、ここで問題がある。私のような、短期滞在の労働不可者は
ウェイティングリストの中での優先順位がとても低い。
次に別の学生が入学を希望すると、私の上に名前を入れていく。
よほど運よく順番が回ってこない限り、
私の名前は、長くウェイティングリストに残っていくことになる・・・。

仕方のないことだった。新しい移民に、カナダの国のために
働いてもらうことを助ける学校だ。そのために、国のお金で
安く運営されているのだから・・・

ロザとヨランダは、一緒に上の学校に行こう!と誘ってくれたが、
私には彼女たちと一緒に勉強する機会は、与えられないだろうと
覚悟していた。
ロザもヨランダも、これからカナダで仕事をして生きていくために
英語を必要としている。

私は、いったい何のために英語を学んでいくのだろう・・・


******

ある日の小さな出来事が、私に1つの答えをもたらした。

最上級のクラスに、日本人の年配の女性Fさんがいた。
彼女はとても流暢にキレイな英語を操っていた。
ボキャブラリー数も相当なものだ。

その日、ある例題が出された。

He was so ( ), when his grandfather was died.

このような簡単な文章だったと思う。
【カレのおじいさんが亡くなって、カレは(   )だった】
この括弧に何を入れるかを話し合った。

sad・・・悲しい。私を含め、多数の意見だ。
ボキャブラリーの乏しい私には、これしか思い浮かばなかった。
先生も、もちろん【sad】がいちばんふさわしいと説明した。

discouraged・・・落胆した。クラスの才媛、ウルセラの意見だ。
肩を落としてがっくりする・・・という意味なので
これもよし、とのことだった。

それ以外にいろんな言葉が飛び交ったが、
【それは、~~にて不適切】だとか、
【その言葉は、~~って風に使うんだよ】とか
先生が説明してくれた。

そのとき、例のFさんが手を上げて
【これはどうですか?】と1つの単語を上げた。
disappointed・・・英和辞書には【落胆する】と載っている。
でも、先生は【この言葉は使えない】と説明した。
なぜなら、disappointedは、期待していたことが
裏切られたときに、がっかりした・・・という意味で使うから、と。

クリスマスプレゼントに指輪を期待していたのに、
チョコレートだったから、disappointedだわ、という風に・・・。
クラスのみんなが、な~るほど!と納得しているのを尻目に
彼女は加えて、こう聞いたのだ。

【おじいちゃんがもうちょっと長生きすると期待していたのに
早く亡くなって、期待はずれだ】という意味で
disappointedを使ってもいいのではないか、と・・・。

先生は、フツウはそういう考え方はしません、だから
disappointedは不適切です、と答えた。
だけど、彼女はまだ食い下がり、
とうとう先生は、その彼女の意見を無視して次の問題に進んだ。
気分を害したのか、彼女は【おかしくないわよね?
長生きすると期待してるって考えてもいいじゃないの、ねぇ?】と、
日本語で私に同意を求めた。

驚いた・・・・英語を第一言語として生活している
ネイティブスピーカーの先生が、【そんな風には使わない】と
言ってるのに、それをおかしいと意見する彼女に・・・。
日本の辞書には確かに【落胆する】と載っている。
長生きすると期待していたのに・・・というのは、
理屈上はそうかもしれない。
だけど、それは屁理屈だ。

言葉は道具だと思う。
たとえば、木を切る斧のようなもの。
きっと彼女は、ぴっかぴかな高級な斧を手に入れているのだと思う。
そして、その手入れは怠らない。いつもピカピカに磨き、
大事に飾っておいているのだと思う。
そう、、、せっかく斧を手に入れているのに、木は切り倒さないのだ。

道具は使ってこそ価値がある。
彼女は、ボキャブラリーも多く、
家でも本でたくさん勉強しているようだ。
だけど、人とのコミュニケーションということでは、
その英語力が発揮されているかというと疑問だ。
授業中も、いろいろな意見を言う。
難しい単語を駆使し、文法も正確に話すのだが、
他のクラスメイトがそれを理解しているようには思えない。
はじめは、私の英語力が劣っているから
彼女の英語が理解できないんだと思っていたのだが、
どうも、他のみんなも理解していないように感じる。
英語の問題ではなく、英語で表したい彼女の意見が
受け入れられないのではないか、、、
この日、それを悟った。

私はやっとボロボロの斧を手に入れた。
ほんとはもっと磨いて手入れする必要があるのだろう。
だけど、私はボロボロの斧でも、
木を切り倒したくてたまらなかった。

もともと、おしゃべりだ。
話好きの私としては、キレイにしゃべれなくてもいい。
とにかく、人とコミュニケーションをとりたかったのだ。
例えば、向かいに住む、チャールズ・ブロンソン似のおっちゃんが
出会うと私をハグして、【My Sweet honey~!】とキスする。
あの人に、気の効いた一言を返したいのだ。
例えば、夫の会社の同僚が、私のことをからかう。
粋なジョークで、これを笑いで返したいのだ。

そう、私が英語を学ぶ理由は、ただひとつ。
人とつながっていたいから。
同じ話題で笑いあいたいから・・・。

******

結局、私の英語は、このときのまま止まっている。
私は斧を磨かなくても、手入れしなくても
力技で木を切り倒すようになってしまった。

もっとちゃんと英語を勉強するべきだった・・・と今でも後悔している。





*****

さて、アナタの願いは、なんでしょね





あ゛・・・ワタシには【学業成就】がいるなっ・・・


*****

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ご覧のように、みなさんのおかげで
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Author:カスピちゃん
弓と布と毛糸と
絵の具と戯れ
メロンパンとたこ焼きを
こよなく愛する
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